VV5th

座談会「Vのキセキ【第2回演奏会篇】」その3

座談会

団員から見る「松下耕」

さて、ここからは少し演奏会の話題から離れ、松下先生やVVの団員の皆さんについてのお話も伺いたいと思います。
まずは、VVの音楽監督である松下先生について。皆さんが松下耕という指揮者、作曲家の存在を知ったきっかけについて教えて下さい。
俺はNコンの課題曲「信じる」7を聞いたのが初めてで、ちょうどその頃合唱を始めましたね。文化祭で合唱部が歌っていたんだよ。なんなら「信じる」がきっかけで合唱を始めたって言ってもいいと思う。
お、良い話だ。
「信じる」がきっかけで松下先生を知ったって人は多いですよね、多分。
俺の場合は、コルアカの先輩方から、他の団とのジョイントコンサートで松下先生を客演指揮者としてお呼びした時に、非常に厳しい指導をして頂いたという話を聞いたことがあった。だから恐い指導者っていうイメージが最初にあったかな(笑)。
当たり前の話ですけど、最初は松下耕がそんなに近しい存在ではなかったですね。
ぼくが最初に松下耕を知ったのは「言葉にすれば」8だった。当時の東京ユースクワイアが模範演奏してたの覚えてる。
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中学、高校から合唱を始めた人たちは、講習会とかNコンの課題曲で松下耕を知る事になるから、そりゃ遠い存在のように思えるよね。
VVで松下先生と出会った時の印象について教えて下さい。
わたしは中学高校と運動部だったので。VVで初めて松下先生を知ったんですね。「おっきいおじさんキタ」って思いました。
身長高いからね。
俺は、作曲家に指導してもらえるっていうのが初めてで、凄く新鮮だったの覚えてます。さっき言った「恐い指導者」っていう印象はすぐになくなりましたね。音楽に関しては妥協を許さない人なんだと改めて思いましたが。
なんとなくVVにいて、自分自身も音楽に対する考えや知識がついてくる中で、「冷静に考えると松下先生って凄い人なんだな」ってことに気付くパターンもわりと多いよね(笑)。贅沢な話だけど。
松下先生の指揮者としての魅力とは?
先生の指揮って、歌い手をその気にさせてくれますよね。
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高校までと比較すると、毎日顧問の先生の練習がある中学高校と違って、松下先生のレッスンは月に一度程度。毎回のレッスンが新鮮だったし、本番も会場の雰囲気に合わせた音楽創りをしていくから良い意味での緊張感があるんだよね。
本番で練習の時と違う振り方をする、ということが多い。当たり前だけどそれが高いレベルの指揮の技術に基づいているから、歌い手が混乱するってことはまずない。合唱指揮者でもそこまでできる人がなかなかいない気がする。
スポーツでいうところの、「型」をやってるのか「試合」をしてるのか、の違いに近いと思うんですよね。練習と違う状況になった時にどれだけ臨機応変に対応できるか、みたいな。先生はちゃんと「型」を修めた上で「試合」に臨んでる感じがします。
本番と練習が全く同じ状況になることはまずないわけですし。
「水のいのち」の時も、練習と本番とで指揮が違うところがやっぱりありましたもんね。
5曲目の「おお、海よ」で一番盛り上がるところとかな。
練習でも「ここはもっと溜めると思う」っておっしゃってたけど、実際に本番になったら「そこまでいくんすか!!」ってくらい溜めてて(笑)。でもやっぱ後から聴いてもそこがすごくいい感じで。
そういった点においてやっぱり松下先生の本番におけるバランス感覚は凄いと思う。勿論団員にもその指揮についていく能力が求められると思うけどね。
団員にその自覚が芽生えてきたのは第3回の演奏会ぐらいかなって思うけど(笑)。第2回ぐらいまでは先生におんぶに抱っこって感じ。
その意味では、やっぱりこの第2回演奏会が節目になったって感じがあるよね。
では、作曲家としての作品にはどのような印象をお持ちですか?
一つ思うのは、民謡を題材とした作品を沢山書いているってことですかね。松下先生の民謡作品って、やっぱハンガリーに留学していた経験があるから、コダーイの影響をかなり受けているんですかね。
そうじゃないかな。コダーイと親交のあったバルトーク9の書法を作品に取り入れているって話をたまにしてくださるし。
コダーイもハンガリーの民謡を題材にして曲を書く人だから、日本の民謡を題材にして、それを応用しているんじゃないかな。
先生って、日本の民謡を研究してそれを合唱作品に昇華させたいのかなって思うんですよね。
民謡自体がそのままだと廃れてしまうから、楽譜という形で残しておきたいっていう気持ちもあるのかも。
なんでも楽譜に起こせば良いってもんでもないだろうけど、それを松下先生は合唱作品として発展した形で残せていると思うし、そこが凄いところだよね。
座談会
  1. ^ 2004年の第71回NHK全国学校音楽コンクール、中学校の部の課題曲「信じる」。作詩:谷川俊太郎、作曲:松下耕。
  2. ^ 2007年の第74回NHK全国学校音楽コンクール、高校の部の課題曲「言葉にすれば」。作詩:安岡優(ゴズペラーズ)、作曲:安岡優、松下耕。
  3. ^ ハンガリー出身の作曲家、バルトーク・ベーラのこと。民族音楽学の祖としてその名が知られている。